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セレスティーヌ(セレス)・ジェンロウ(家事手伝い?)
リオネル・マクフィールド(FBI捜査官)
ルシエンダ・ジェンロウ(セレスの妹)
フィリップ・ジェンロウ(セレスとルシーの父親)
モンタナの資産家令嬢セレスティーヌ(完璧な秘書・ルシーの姉)と、事件の捜査で現れたFBI捜査官リオネル。
ちょっと電撃的なロマンスです。
リオネル・マクフィールド(FBI捜査官)
ルシエンダ・ジェンロウ(セレスの妹)
フィリップ・ジェンロウ(セレスとルシーの父親)
モンタナの資産家令嬢セレスティーヌ(完璧な秘書・ルシーの姉)と、事件の捜査で現れたFBI捜査官リオネル。
ちょっと電撃的なロマンスです。
レディ・ビジネス 1
まだ硝煙と血の匂いが残る屋内に、リオネルは足を踏み入れた。大きなテーブルの上に乱雑に置かれているのは、見慣れてしまってはいるが到底受け入れる事のできない違法な薬物。そして、さっきまでそこで確かに生きて存在していたはずの人間は、立ち上がることも息をすることも無く、人生を完全に遮断されて運び出された。
強行突入の結果が生み出した五人の遺体。どれもまだ子供とも言える若さで、何故、このような山の中で惨めな骸にならねばならなかったのか、それを思うと胸が痛くなる。
こうなるとわかりきっていたのに、あれほど強行策をとらないよう、何度も進言したのに……。
リオネルにはわかっていた。
こんな山の中では、組織の中でも格下のモノしかいないだろうと。上の連中は快適な場所で、おのが欲を満たす為に享楽の限りを尽くしているであろうことを。
必然的にこう言う場所で遭遇するのは、いつもリオネルよりも年若いものばかり。おのずと十代の子供達も含まれてくる。
クスリと子供。いつまでたっても断ち切れない連鎖が、リオネルの捜査をがんじがらめにする。そして犠牲になるのは、いつも年若い子供達。
「ミスター・ジェンロウ。ご協力感謝します」
「いやいや、こちらこそ。また、なにかありましたらどうぞ遠慮なく」
「きっとまた、お言葉に甘えさせて頂くことになるかと思います」
フィリップ・ジェンロウは、若い捜査官に笑みを向け、良ければこのあとお茶でもと誘いかけた。土曜日の昼下がりは、毎週家族や友人達が集まってひとときを楽しんでいるのだという。既に庭先には小さい子供達も出ていた。
「いえ、これで失礼致します。ご家族の団らんに、私のようなものは無粋なだけですから」
社交辞令としては最大級の申し出に感謝しながらこたえた。
「そうか、それは残念だ」
リオネルは、フィリップ・ジェンロウの書斎を出ると、入ってきた廊下を戻りまっすぐ玄関に向かった。そこには、来た時にはなかった車が二台、並べて停めてあった。車種、装飾、ボディカラーから、一台は幼児のいる家族。もう一台は若い女性と目星をつけた。
フィリップ・ジェンロウには二人の娘がいる。一台はそのどちらかの所有だろうか。レモンイエローのボディカラーが、優しく穏やかな、そして天真爛漫なイメージを思い起こさせる。
それを横目に見ながら、大きな練鉄製のゲートに向かう。
「待って」
鋭く、強い響きで声をかけられた。
どうせ女性に呼び止められるなら、もう少し優しく問いかけてもらたいものだな、と思いながら振り返った。
リオネルに向かって息を切らしながら追いかけてきたのは、柔らかくウェーブさせた栗色の髪が美しい若い女性。
かなり距離を縮めてわかったのは、なかなか美人だということだった。瞳の色はゴールドを散りばめたようなチョコレート色、サーモンピンクの薔薇を思わせる唇、そしてそれを増長するような薔薇の香り。軽く息を弾ませている頬はピンク色にそまり、少し背は高いが、リオネルには高すぎることは無い。
スッキリした姿形にシンプルなシャツドレスが良く似合っている。総じて美形であり、美人を見て嬉しくない男はいない。
「何か、ミス……?」
「ジェンロウ。セレスティーヌ・ジェンロウよ」
「はじめまして。ミス・ジェンロウ」
「挨拶をしにきたのではありません」
思いのほか、気の強い性質のようだ。ジェンロウ家の長女は。
「ミスター、父と何を話されましたの?」
「仕事のことです」
「そう」
その返事がいかにも人を軽く見たような物言いだったので、リオネルは目の前の女性を改めて観察した。彼女の目は、キツく強い眼差しでリオネルを見ている。
最初に声をかけられた時、なぜ気付かなかったのだろう。あの響きだけでも、充分気の強さは見えていたのに。
どうやら、ただの美人ではないようだ。
「そうです」
それでも平然と返す。
「ミスター、わたくしは『コレは男の仕事だ』と言われて、簡単に引き下がったり丸め込まれたりするほどおめでたくはありませんの。ニッコリ微笑んで、ここで貴方を送り出して差し上げる気もありませんわ」
「何がお望みですか?」
「父を事件に巻き込まないで」
「……?」
「確かに父の所有する貸別荘の一つで事件があったわ。でもそこは長期契約で、父には何がどうなっているのか介入できていないところよ」
「そうですか」
「とぼけないで。ミスター・捜査官」
「マクフィールド」
「そう、名前はあるのね。それは仕事用?」
「本名ですよ。お父上にもそう名乗りました」
「わかったわ。ミスター・マクフィールド。あなた方は、父の契約に興味がおありなのでしょう? そして、父もそこに絡んでいないかを調べたいはずだわ」
「なぜ? お父上はその方面に?」
「ごまかさないで頂戴」
「お父上を疑ってはいません。ただ、あの別荘を始めこのあたりの土地についてはミスター・ジェンロウが一番深く関わっていると地元警察が言うものですから」
「ついでに父を陥れようと?」
「我々がなぜそうする必要が?」
「わかるわけないでしょう」
「困った方だ。我々は、あくまでも借り主の情報を得る為にご協力頂いているだけです。全く他意はありません」
「本当なのね?」
「間違いなく」
「わかったわ。お引き止めしてごめんなさい。もう帰って頂いて結構よ」
そう言うと、セレスティーヌ・ジェンロウはリオネルを鋭く見つめてから身を翻し、屋敷へと戻っていった。
リオネルは小さく肩をすくめた。何とも威勢の良いレディだ。察するところ、あの車の持ち主は彼女ではなく妹のルシエンダ・ジェンロウだなと、推測を固めた。
結局、貸別荘の借り主は途中で無名の人物になってしまった。わかった事は、今は亡きしがない工場労働者が名前を利用されたという事実のみ。
リオネルの捜査は常に行き止まりの連続。わずかな手がかりも、やっと見つけた糸口も、もしかしたらと思う直前で断ち切られる。
リオネルが闘う相手は麻薬組織だけではなく、己の苛立つ神経、そしてつきまとう疑念。
(2008.03.02)